建築工事の見積書を発注者のために分かり易く解説します

建築工事の見積書は建築業界以外の人にとって難解であることが多い。また見積書を提出する工事会社も見積書の各項目がどのような工事で、その内訳について詳しく説明することは殆どない。

しかし、発注者、施主がその工事内容をしっかりと把握することで、無駄な工事を事前に防いだり、工事費用の減額案を自ら提出できたりとそのメリットは大きい。

今回は、今後の建設プロジェクトをより有利な立場で進めて頂くために、建築工事の見積書について分かり易く解説させて頂く。

建築工事の見積書を解読する

それでは実際の見積書をベースに解読を進めていく。下記に見積り書の最初のページと次のページを記載する。

建築工事の見積書を解説

 

1. 共通仮設費とは何か?

共通仮設費について。まず仮設費の定義だが、建物を建てる際には事前に作業員の足場を作ったり、防音のために仮囲いを作ったりと、直接建物を建てる以外に構築物を建てたり、その他熱源や水等を準備する必要がある。そのための費用を仮設費と言う。

この仮設費は共通仮設費と直接仮設費に分類される。直接仮設費とは建物を建てる際に必要となる費用のことを言う。例えば、鉄骨の組立や外壁の設置には建物外周に作業員のための足場を設置する必要があるが、これは直接仮設費となる。

一方、共通仮設費は直接仮設費以外のことを言う。例えば工事のために敷地全体を覆う仮囲いというものがある。これは建物を建てるための直接的な仮設では無いため共通仮設費に分類される。その他、運搬車両のために地面に敷く鉄板などが挙げられる。

 

2.建築工事とは何か?

建築工事は建物そのもの工事のことを言う。基礎から構造、そして外壁や屋根など、建物を構成する殆どのものがそれに当たる。電気や空調といった設備工事以外と考えてもらえば理解しやすいだろう。また、建築工事は下記のように分類される。それそれの項目について解説してみる。

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①直接仮設工事

こちらは上述した共通仮設費以外の仮設費用と考えて貰えば問題ない。構造の組み立てや外壁設置のための足場や一般的な養生費用などがこれに当たる。

 

②土工事

土工事は土に関する工事のことを言う。建物の基礎は地中深くに設置される。その基礎を設置するためには地面を掘らなければならない。また砕石を敷き詰めて地盤を固めたり、地盤が弱いところではセメントを混ぜるなどして地盤改良をしなければならない。

 

 

③杭地業工事

地盤の弱い敷地に階数の高い建物を建てる場合、支持層と呼ばれる堅い地盤で建物を支えなければならない。弱い地盤の場合、支持層は地面の深い位置にあるので、通常の基礎だけでは支持層には届かない。

そのため、杭と呼ばれる細長い棒状の鉄筋コンクリート(鉄骨もある)を用いて支持層まで到達させ支持する。これら杭を設置する工事を杭工事と言う。

 

 

④コンクリート工事、型枠工事

コンクリートは建物を作り上げる上で無くてはならない重要な素材だ。床、壁はもちろんのこと、柱、梁など構造材としても使用される。

これらコンクリートを設置する作業をコンクリート工事と言う。また、コンクリートは運搬時は液状であるため、型枠に流し込んで、乾燥させて成形する必要がある。この型枠を設置する工事をコンクリート工事と言う。

 

 

⑤鉄筋工事

コンクリートは柱、壁、床といった構造材として使用されるが、それ単体だけでは構造的な強度は弱い。堅いが脆くすぐに割れてしまう。その弱点を克服するため、コンクリートの中に鉄筋と呼ばれる鉄の棒を設置する。

これによりコンクリートは曲げや引張りに強くなり構造体としての強度を確保することが可能となる。この鉄筋を設置する工事のことを言う。

 

 

⑥防水工事

外部に吹きさらしとなる建物の最大の的は雨漏りだ。この雨漏りを防ぐために屋根やバルコニーに施されるのが防水という工事だ。一般的には「アスファルト防水」「シート防水」「塗膜防水」というものがある。

 

 

⑦石工事

石を設置するための工事。現代の建物の場合、石を設置するのは外壁かエントランスの床、外構の舗装ぐらいだろう。その他、オフィスビルやグレードの高い内装で用いられることもある。費用は通常の工場製品を使用する場合に比べて高価となる。

 

 

⑧タイル工事

タイルを設置するための工事。タイルは外壁やエントランス等、ある程度のグレード感が要求されるスペースの床や壁等によく用いられる。費用は安いものから高いものまで様々だが、塩ビ系の仕上げ材に比べれば高くなる。外壁に用いる場合は全体の工事金額に対する割合も高くなる。

 

 

⑨木工事

木を使った工事。例えば造り付けの棚やカウンターなどがこれに当たる。また間仕切り壁の下地材としても頻繁に用いられる。

 

 

⑩金属工事

金属工事は鉄やアルミ、ステンレスなど、金属による工事となる。手摺や外壁、屋根など様々な部分で用いられる。

 

⑪ 左官工事

主に壁や床をこてを使って塗り仕上げる工事のことを言う。代表的なのはモルタル仕上だ。コンクリートの仕上げとして、住宅の外壁の仕上げとしても良く使われる。また、最近流行っている自然素材による仕上げ(漆器や珪藻土)は正に左官仕上げの代表的な例である。
 

 

⑫木製建具工事

建具とは窓やドアなどの開口部の扉や枠のことを言う。窓の場合サッシとも呼ばれる。木造建具は主に木造住宅やマンション等で用いられ、軽くて、コスト的にも割安で工事することが可能。
 

 

⑬金属製建具工事

建具の場合金属は鉄かアルミとなる。アルミは耐候性が強いので外部の窓の素材として使われることが多い。また、鉄は内部の扉として使われることが多い。強度が高いので頻繁に開け閉めが行われる箇所に使われることが多いが、重いという難点がある。

 

⑭ガラス工事

ガラス工事は現代の建物において様々な場所で使われる。外壁や内装のパーティション、壁の仕上げ材など。いずれにしても意匠的な意図で使われることが多く、他の素材と比べても価格はかなり高くなる。

 

⑮塗装工事

塗装工事は壁や床などのを塗装する場合の最終仕上げの工事となる。

 

⑯仕上げユニット工事

流し台や洗面台など既成品の設置工事のこと。またピクト表示などサイン関連の工事もここに含まれる。

 

3.電気設備工事

電気設備工事は電気に関する工事だ。分かり易いところで言えば照明、コンセントの設置、また表に見えないが、分電盤やキュービクル、避雷針の設置、火災報知機の設置も電気工事となる。当然のことながら建築工事に比べれば規模は小さいが、建物を機能させるための重要な工事である。

 

 

4.給排水衛生設備工事

給排水衛生設備はその名の通り、水回り関連の工事となる。キッチンや洗面所、お風呂の水栓の設置やそれらの給排水ルートの確保などが主な内容となる。また水回りに関する什器や備品類の設置も給排水設備工事となることが多い。

 

 

5.空調換気設備工事

空調設備の設置、換気設備の設置及びそのための配管ルート確保が主な工事となる。これら配管はダクトとも呼ばれ、比較的大きなものとなるので、構造の梁やスラブを貫通させる必要があり、構造との調整が必要となる。

 

 

6.昇降機設備工事

昇降機設備工事とはエレベーターの設置工事となる。エレベーターを設置するには建物側に構造的な支えが必要となる。またEVの荷重条件やサイズによってその値も大きく変化する。またエレベーターは基本的に高価であるが、規格品かオーダーメイドかで金額が大きく変わるので、入念に検討して仕様を決めなければならない。

 

 

7.外構工事

外構とは建物の外の部分の事を言う。植栽やアスファルト舗装、柵、フェンス、ブロックの設置、門扉の設置など建物の外に設置されるものは外構工事と呼ばれる。外構工事は終了していなくても建物の使用が可能なため、建物完成入居後にも工事が続いていることも多い。

 

 

8.設計監理費

設計監理費は設計(図面を作成する業務)と監理(工事が図面通りに進んでいるかチェックする業務)に分類される。マンションやビルなどの大規模な物件であれば工事費の3〜5%程度。住宅であれば工事費の10%前後が相場となる。今回のように設計施工で一括発注する場合は相場に比べて割安となる傾向がある。

 

見積書から工事費用を抑える提案をしてみる

見積書には自分が実際にイメージしていないようなものが含まれていることが多い。例えば、仕上げ素材などはその一例としてよくある。大規模な建物の場合、床、壁など各部の仕上げは膨大となるため、全ての仕上げについて丁寧に説明を受けることは殆ど無い。図面に記載しているので確認しておいて下さいというスタンスの工事会社や設計事務所がほとんどだ。

よって、イメージとは全く異なるものになっていた、と言うことでトラブルが発生することが多々ある。よって見積書に記載されている仕上げ材について徹底的に調べる必要がある。例えば外壁の仕上げは素材によって大きく金額が変わってくる。石とタイルでは見かけは殆ど変わらない場合がある。であれば単価の安いタイルを選択するのもありだ。

また、左官仕上げよりもサイディングなどの工業製品を使うことで、工事の手間が省け工事費用を下げることができる。自分がイメージするものが本当にその素材でしか実現できないのか?設計者、工事会社とよく相談して工事費用を下げる工夫をしてみよう。

 

最後に

今回は建設工事における見積書を見る際にご理解して頂きたい内容について解説させて頂いた。文章と動画で確認することでよりイメージしやすくなったのではないかと思う。

工事会社から受け取る見積書に多くの工事の情報が含まれている。その内容について理解を深めることで、工事会社とも対等にコミュニケーションが取れ、建設プロジェクトがより良い方向に進むと思う。その他、不明点があればアーキクラウドの専属スタッフが対応させて頂くのでご連絡頂きたい。

お問い合わせ/アーキクラウド

 

 

山田博保
株式会社アーキバンク代表取締役 一級建築士
建築業界での経験を活かしたWEBメディアを運営。工事のマッチングサイト「アーキクラウド」や設計事務所、インテリアデザイナー紹介サイト「アーキリンク」を手がけながら、建築業界における物販事業、WEBコンサル事業にも携わる。

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